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世の中の物事についてあれこれ考えるkudeの日記


by kude104
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2回目だと意外に面白かった「ハウルの動く城」

金曜ロードショーで「ハウルの動く城」を見ました。
公開時に劇場で1回見て、今回が2回目です。

初めて見たときには、「これはひどい、ストーリーが破綻している」と感じ、それゆえぼくの中での評価は低いものでしたが、今回改めて見てみると、不思議と違和感なくと言うか抵抗感なく見られて自分でも驚いてしまいました。
「あれ? 俺、どこにダメ出ししてたっけ?」みたいな。

免疫ができていると言うか、「この作品はこういうもんだ」という心構えが出来ているので、拒否反応が起こらなかったのかなぁ・・・とも思いますが、それ以上に、前回の自分は鑑賞のポイントを間違っていたのではないか?という思いが強いです。

ハウルの面白さって、アニメーションの面白さなんじゃないかと、今回強く感じました。
アニメーションの面白さと言うのは、端的に言えば、「映像の面白さ」と「動きの面白さ」です。
たしかに、ストーリーは破綻していると思う。
でも、アニメーションの面白さという点では、本当に上手い。

たとえば、王宮の長い階段をソフィーと荒野の魔女が登っていくシーン。
原作にあのシーンがあるかどうかは知りませんが、たぶん無いんじゃないかと思います。
初めは単に「二人が王宮に入る」というだけのプロットがあって、それをどんな絵にするかという段階で、宮崎監督がふと閃いたのではないか。
「長い階段があって、おばあさん二人がえっちらおっちら登っていくシーンがあったら面白いな」と。
「王宮に入る」というプロットで、普通に王宮に入らせちゃう人と、あのシーンを思いつく人と、この違いは決定的に大きい。

でもってまた、「おばあさん二人がえっちらおっちら登っていく」動きの演出も、絶品でしょ。
その上さらに、あの変な犬を絡ませて、そいつがやたらと重くて、それをソフィーが抱えて登るとなお面白いぞってな感じで、面白くなりそうな要素はがんがん盛り込んで行く。
そのあたりの貪欲さというか、「面白いアニメーション」に対する嗅覚の鋭さというものを感じずにはいられません。

動く城のデザインにしてもそうなんですけど、宮崎監督ってたぶん、世界を構築するのが楽しい人なんじゃないかと思う。
こんな世界があって、そこにはこんな人がいて、こんなものがあって、こんな文化があって・・・みたいなことを想像するのが楽しい人なんじゃないだろうか。
で、彼ら・それらが、活き活きと動いているシーンが見えるんじゃないかな。
つまり、ストーリーが先に見えるタイプではなく、シーンが先に見えるタイプなのではないかと。
宮崎監督にとってストーリーは、シーンを「映画」にするための方便なのではないかと思います。

ハウルを見ていると、ぶっちゃけ、大層なストーリーなんて要らないよなぁと思うのです。
ソフィーと愉快な仲間たちが、動く城で繰り広げるホームドラマで、十分面白かったはず。
宮崎監督なら、アニメーションの面白さだけで、十分2時間持たせられますって。

宮崎監督としても、近年、作風は脱ストーリー的なところに向かおうとしているのではないかと感じます。
でも、「映画にはドラマチックなストーリーが無ければならない」みたいな固定観念なのか外からの要求なのかがあって、無理やりストーリーを当てはめてシーンをつないでいるように思えます。
宮崎監督には、ぜひその固定観念を突き破って欲しい。
宮崎監督のイマジネーションが迸る、非日常世界での“日常”を描くアニメって、絶対面白いと思うんだけどな。

もし、そういうストーリーの無い映画に挑戦できない理由があるとすれば、それはおそらく、「ホーホケキョ となりの山田君」がジブリのトラウマになっているからに違いない。
by kude104 | 2006-07-21 23:59 | 映画