世の中の物事についてあれこれ考えるkudeの日記


by kude104
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31

宮崎駿という人

昨日の「NHK プロフェッショナル 仕事の流儀 宮崎駿のすべて」は見応えありました。
一言で言うなら、「壮絶」。
当たり前だけど、楽しんで映画作ってるわけでは無いんだなぁ。

こんなこと言うと「おまえ何様やねん」という話ですが、宮崎さんを見ていて可哀想というか痛々しさを覚えてしまいました。
「人を楽しませられなければ、自分の存在理由がない」という焦燥感が、宮崎さんの創作のエネルギーだという。
それで、苦しんで苦しんで映画を作っている姿を観ると、「大丈夫、あなたはもう承認されているから!」と言ってあげたい気持ちになっちゃう。
その苦しみから解放してあげたい気持ちになる。

傍からは、あれだけ成功しているように見えても、まだ満たされないとは・・・。
それもそのはずというか、宮崎さんが承認されたい相手はただ一人、亡くなられたお母さんなのでしょう。
だから、きっと、たぶん、彼の渇望は永遠に満たされることはないのだろうなと思います。

でもというか、やはりというか、それくらい大きな承認欲求がなければ、あれだけの作品を作ることはできないのでしょう。
創作の世界では、結婚してぱっとしなくなっちゃうケースが多々あるような気がしますけど、あれって承認欲求が満たされてしまって、創作へのエネルギーが弱まっちゃうからなんでしょうね。
その点宮崎さんの場合は永遠に満たされることのない承認欲求を抱えていらっしゃるわけですから、「強い」というか並の人間では太刀打ちできないわけです。

番組の中で、宮崎さんの映画作りの手法が紹介されていました。
まず、思いつくままにスケッチを描くわけですね。
たぶん、頭の中に「こんなシーンを描きたい」というイメージがあるのでしょう。
それをスケッチする。
で、そうこうしているうちに、“描きたいシーン”をつなげるストーリーがおぼろげに形になってくるのでしょう。
この段階で、製作にゴーサインを出しちゃう。
はっきり言って、「無茶するなぁ」と思います。
見切り発車もいいところです。
こんな映画作り、宮崎駿とジブリ以外、まずやらないでしょう。
やったところで、普通なら、こんなやり方で上手くいくはずがないもの。

で、宮崎さんが絵コンテを描いて、それを元に映画が製作されていくわけですが。
絵コンテを描いているうちに、ストーリーがどんどん変化してしまうようです。
絵コンテ描きながら、スタッフに細かい指示を出しながら、セル画というのでしょうか、動きの1枚1枚を描いた絵をたぶんすべて自分でチェックされているんでしょうね、あれ。
それで、気に入らないと自分で直接直してしまう。
そこまでしていたら、身体が持たんだろうにと思うのですが。
ただ、そうして自分でチェックして自分で直してしているうちに、キャラクターの存在感が宮崎さんの中でどんどんリアルになっていくという話には、なるほどと思いました。

「このキャラクターはこうじゃない」「このキャラクターはこう動く」
そういうことを、細かい修正作業を積み重ねることで、自分の中に定着させていくというか、積み重ねるたびに、それまで曖昧だった部分がはっきり見えてくるのでしょう。
そうすると、「キャラクターが勝手に動き出す」ようになる。
キャラクターが勝手に動くから、ストーリーも宮崎さんの思い通りに進まなくなるというわけですね。

面白いなぁと思ったのは、ワンシーンの絵コンテを描いたら、下の余白に「つづく」と書くというエピソード。
その先どう物語が続くのか、描いている宮崎さん自身も分からないといいます。
本当に、まるで週刊漫画の連載のようです。
あるいは、テレビアニメの制作手法に近いのでしょうか。

最近の宮崎作品はストーリーの完成度が低いと感じていましたが、そりゃそうだよな、と。
こんなやり方でストーリーが破綻しない方がおかしい。
週刊漫画の連載のようだといいましたが、漫画で言うところの編集者もいないんですから。
たぶん、相談する相手も、一緒に考えてくれる人もいないんじゃないかな。
ましてや、宮崎さんがうんうん唸ってひねり出した絵コンテに、ダメ出しをする人など誰もいない。
彼ひとりが神で、彼ひとりが正解なのでしょう。
それであれだけのレベルのものを作れるのは、やはり宮崎さんの実力ということだろうなぁ。

同様に、なぜ宮崎アニメはあれほどキャラクターが活き活きとして心躍るシーンが満載なのかも、上に書いたとおり、よく分かりました。
宮崎さんが圧倒的に強いのは、「自分で絵が描ける」という点でしょうね。
自分の描きたい絵を、自分で描ける。
しかも、誰よりも上手く。
(そりゃ、後進が育たないのも頷けます)

宮崎さんのようなアニメ監督は、おそらくもう出現しないだろうなと思います。
あの能力と、ジブリのような製作環境と、そしてあの渇望感と。
ふたつまでなら揃いそうだけど、みっつ揃えた人はもう出ないでしょう。

こりゃ、やっぱり「ポニョ」は観とかないとな、という気になりました。
[PR]
by kude104 | 2008-08-06 22:03 | テレビ