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世の中の物事についてあれこれ考えるkudeの日記


by kude104
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「ラストキング・オブ・スコットランド」はめちゃくちゃ怖い

今日は映画サービスデーということで「デジャブ」を観るつもりでしたが、あろうことか、大量の人、人、人。
春休み、日曜日、映画サービスデーのトリプルコンボということでしょうか。
満席ということなら、その次の回にという選択肢で対応してもよかったのですが、そんなどころの混雑じゃない。
チケットを買うのに40分待ち(とアナウンスがありました)の長蛇の列、という状況でした。
正気ですか?
一瞬並ぼうかと思いましたが、やっぱり冗談じゃないということで断念しました。
これはエイプリルフールじゃないですよ。

とはいえ、まったく何も観ずに帰るのも敗北の気分だったので、並ばすに買える劇場で上映しているタイトルから、「ラストキング・オブ・スコットランド」を観ることにしました。
でもごめん。
ぼくが間違ってた。
これは、そんな「並ぶのが嫌だからこれにしよう」なんて軽い気持ちで観ていい映画じゃなかった。
怖えぇぇよ、マジで怖すぎるよ、この映画。

内容はと言うと、アフリカはウガンダの独裁者アミンの人となりを、彼の主治医であり顧問であるスコットランド人の若き医者ニコラスの視点で描いた映画というものです。
知識に疎いのでどこまで事実でどこから脚色か分かりませんけど、いちおう、事実に基づいた映画ということになっています。

物語は、彼がクーデターにより大統領になったころから描かれています。
この頃の彼は、まさに国を思い民衆を思うカリスマ指導者として、魅力的に映ります。
しかしやがて、徐々に恐怖政治を強いる独裁者として変貌していき、ついには30万人とも言われるウガンダ人を殺害するまでに至ります。

最初は、「思ったよりもじめじめしてないじゃん」と意外に思うくらい陽気な映画でした。
でも、中盤から後半にかけての怖さは、近年まれにみる感じでしたね。

この映画の怖さは、ひとつには、虐殺の描写のリアルさにあります。
見せしめとして手足を切断され、腕の位置に脚を、脚の位置に腕を並べられた死体のショットらしきものが、かなりまざまざと映ったりします。
怖くて直視できなかったんですけどね。
あれ、どうやって撮影しているんだろう。
まさか、本当に死体を使ったわけじゃないよね。
絶対今晩夢に出てくるよ。

そういう視覚的な怖さと合せて、やはり、権力に人が狂っていくことの恐怖ですね。
あれだけ陽気で魅力的だったアミンが、いつからか不気味に恐ろしく感じられるようになる恐怖。

アミンという人が、映画を見る限りでは、生まれついての独裁者であり残虐な人物であったとは思わない。
もしそうだとしたら、それはアミンに限らず、われわれ人間誰しもがそうであるというレベルの話だろうと思います。
彼が特別残虐だったということで片付けられる話ではない、と思うのです。

観ていてそりゃそうなるよなぁと思ったのですが、四六時中命を狙われる状況にあれば、人はそりゃあ疑心暗鬼になり、誰も信じられなくなり、政敵を粛清していくことになりますよ。
権力が人を腐らせる部分もあるけど、やはり、その前にあるのは殺されることへの恐怖だろうと感じました。
選挙で民主的に政権が交代する国と、クーデーターや暗殺といった暴力で政権が交代する国との、これは違いだろうと思います。
もしウガンダが平和的な国であったなら、アミンも独裁者にならずに済んだだろうと思うと、彼が異常だったということで片付けてよい話とは思えませんでした。

それでも、権力が人を腐らせる部分は確かにある。
映画を観ていて、例によって、自分ならどうするか?という視点で観ていたわけですけど。
やはり必要なのは、まずは、権力者は自分の権力に自分でリミッターを設けなければならないということでしょう。
ぼくがあのスコットランド人であったなら、初っ端、まだアミンが理想に燃える良き指導者であったときに、彼に自らの権力を自ら制限することを勧めるべきだろうと思います。
それは、そういった憲法の制定であり、やはり、民主的に政権が交代するシステムづくりであろうと思います。

選挙によって政権が交代するというシステムは、権力者側から見れば、選挙で政権が交代する道を作ることで、政敵が暴力で政権を奪取しようとする動きを抑制するという効果があろうかと思います。
それが非常に重要だと感じました。
権力者というか施政者が命の危険を感じなくていいということは、非常に大切なことですよ。

そういう政権交代のシステムを作ったら、権力者には、4年か5年かそれくらいの任期で政権の座から退く覚悟をさせることが重要でしょう。
終身で権力を維持しようと思うから、政敵を葬ることになるのだと思います。
自分の任期を4~5年だと思い定めれば、そのへんの妙な執着は無くなるんじゃないでしょうか。
それを、まだ自身の栄華ではなく国の栄華を思っているうちに、決意させておくべきだろうと思います。

たとえアミンが倒れたとしても、民主的な政権交代の制度がないことと、権力者が無期限に権力を握る構造である以上、第二第三のアミンが現れることになるだろうと思います。
アミン後のウガンダがどうなのか知りませんけど、総じてアフリカが(印象として)安定しないのは、この二つが欠けているからじゃないでしょうか。

間違ってもデートムービーなどでは決してありませんけど、残虐シーンに耐性のある方なら、思いのほかエンターテインメントとして楽しめる作りになっている映画です。
人の狂気をご覧になりたい方はぜひどうぞ。
by kude104 | 2007-04-01 23:59 | 映画