世の中の物事についてあれこれ考えるkudeの日記


by kude104
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他人事の戦争 「となり町戦争」

以前になにかの折に目にした「となり町戦争」というキーワードというか『設定』が頭の隅っこに引っかかっていて、今回本屋で文庫化したそれを見つけて早速購入・読了しました。
というわけで今回は集英社文庫出版、三崎亜記著の「となり町戦争」の読書感想文です。

ある日突然、主人公の住む町と隣町とが戦争を始める──ということで始まるこの物語。
町同士というスケールの小ささと、戦争という重大事とのちぐはぐな感じが面白いですよね。

それでも本を手に取る前のイメージでは、やっぱり戦争ものということで、主人公が否応なく戦争に巻き込まれて、危険な目にあったり、命のやり取りをしたり、大切な人が死んで涙したりといったスリリングでドラマチックで重厚な物語を予想していました。
身近な「わが町」が「戦場」になるというところでの、日常と非日常とのギャップが読みどころかな、と。
でも、ぜんぜん違った。

本書で描かれる戦争は、まるで現実感がないものとして展開します。
まずもって、戦争自体がまるで公共工事のように、役所手続に則って行われます。
戦争をする町同士は、べつに遺恨があるわけではなく、抜き差しならない利害対立があるわけでもなく、「この戦争という事業をともに手と手を携えて推進していきましょう」といった趣です。
戦争をする意義や目的でさえ、まるで「ここに高速道路を作る意義は──」というのと変わりません。
なぜ戦争をしなければならないのかよりも、「戦闘時間は通勤時間と重ならないように九時から五時まで」とか「窓ガラスが割れたときの保証金はいくらか」とか、そっちのほうが重大事である──この物語の中で戦争はそういうものとして描かれています。

そういう”ずれ”がとにかく淡々と描かれます。
この「淡々さ」が、なんともいえずしんみりと切なく、そしてひたひたとした不気味さを感じさせます。

この物語の中の戦争は、銃声を耳にすることもなければ、兵士や死体すら見ることはありません。
ただ、発表される戦死者の数が増えていくだけです。
でも、見えないどこかで確かに誰かと誰かが殺し合っている。

それは、「見えない戦争」という不気味さやミステリーを描くものではなく、いうなれば、僕らにとっての「地球のどこかで起こっている戦争」を描いたものと言っていいんじゃないでしょうか。
わが星で起きている戦争なのに、まるで現実感がない・・・みたいな。
町と地球とのスケールが違うだけです。

でも、だからと言って、この物語が「地球のどこかで起きている戦争に無関心ではいけない!」というメッセージ性を発しているわけではありません。
ただただ「今この瞬間も誰かと誰かが殺し合っているのに、まるで現実感がないよね~」という感覚を描いたものという気がします。
どこか諦観と、それでいて途方に暮れる感覚を持って。

戦争を題材にしていながら、なかなか変わった味わいで面白かったです。
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by kude104 | 2007-01-08 23:59 |