世の中の物事についてあれこれ考えるkudeの日記


by kude104
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「人形劇ギルド」と「Ever lasting lie」

昨日の続きで「人形劇ギルド」の話を。

物語としては、小さな炭鉱の島で暮らす父と娘の親子が主人公です。
二人は貧しいながらも幸せに暮らしていました。
そんな二人のささやかな楽しみは、娘が弾くおもちゃのピアノでした。
父親はおもちゃではなく本物のピアノを買ってやりたいと思うのですが、値段が高くて今の稼ぎではとても手が届きません。
しかし、炭鉱の穴底深くにある“天国”と呼ばれる採掘場なら、今の10倍の稼ぎが得られるという。
でもそのかわり、一度もぐれば何年も帰って来られません。
そしてある日、父親は娘にピアノを贈り、“天国”へと向かうのでした。

──といったストーリー。
非常にストレートというかシンプルというか、印象としてはまさに絵本のような感じです。
余計なセリフやシーンなど一切ない必要十分まで削ぎ落としたストーリーテリングは、いいですね。
無駄なものがない、余計なものがないというのは、実に見ていて気持ちが良い。
俳句や短歌のようにというと大げさかもしれませんが、削ぎ落とすことで濃密に雄弁になるという良い例じゃないでしょうか。
このへんの匙加減というか「削ぎ落とす」のって、人間なかなか出来ないんですよね。
なんでもそうだと思います。
付け足すのはわりと簡単ですが、削るのは難しいもんです。
そのへんはさすがミュージシャンというか、歌詞という限られた言葉の中で世界を表現している人の本領が遺憾なく発揮されているんじゃないでしょうか。

そして、作中で「ギルド」が流れると、やはり「おおっ」と感動しますね。
ちょうど、お父さんが“天国”に向かうシーンで曲がスタートし、来日も来る日も穴を掘る姿が唄の内容とオーバーラップする作りになっています。
ただ、個人的には、ぼくが抱いていた「ギルド」の物語的なイメージとこの人形劇のそれとは、ちょっと違ってましたね。

「ギルド」の歌詞はこちら(うたまっぷ)にありますが、歌詞から受けるぼくのイメージとしては、“人生に疲れた人”が浮かびます。
生きるための様々な日常的行為が無味乾燥で、「人間という“仕事”」だと思えてしまう、そんな気分に寄り添いながらも「ほら、がんばっていこうぜ」と励ましを入れるような、そんな唄に感じています。
なので、「人形劇ギルド」の娘のために一生懸命働く父親の姿とは、ぼくの中ではあまり重ならなかったです。
ま、唄の「ギルド」の歌詞の内容を「人形劇ギルド」にしたわけではなし、解釈は人それぞれなので、違っているからどうだという話ではありませんが。

ぼくの中で「人形劇ギルド」のイメージに近いのは、むしろ、アルバム「THE LIVING DEAD」収録の「Ever lasting lie」でした(歌詞はこちら(うたまっぷ))。
どちらも“掘る人”ということでの連想ですが、それ以外にも、愛する人を幸せにするために始めた行為が、いつしか目的を見失うというか微妙に変質するあたりが共通しているんじゃないかと思います。

愛する人を幸せにするために稼ぎに出たことで、二人は離れ離れになってしまう。
果たしてそれで二人は幸せになれたんだろうか?
本当は、ただ一緒にいることが本当の幸せだったのではないだろうか?
──と思えてくる。
でも、そういった疑問を感じさせて終わるだけなら単に皮肉な物語というだけですが、バンプの物語は、「でも、離れていても、二人の心は通じ合っていた」という救いを最後に添える。
そこがいい。
その小さな救いが添えられていることで、なんとも切なく暖かい詩情を感じます。

そのへんの詩情感が、「人形劇ギルド」に似ているなぁと思うのです。


ちなみに、「人形劇ギルド」とは関係ないけど、「Ever lasting lie」の歌詞の一節にある「愛する人の命に値がついた」って表現は、すごいと思う。
たぶん手術費用だろうと思うのですが、なんかものすごい絶望感を感じさせる表現だなぁと、初めて聴いたときにちょっと衝撃を受けた。
「Ever lasting lie」の歌詞の物語性は、バンプの作品の中でもかなりのものだと思います。
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by kude104 | 2006-10-03 23:59