世の中の物事についてあれこれ考えるkudeの日記


by kude104
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完璧なる「DIVE!!」

角川文庫出版、森絵都著「DIVE!!」を読了しました。
これは文句なしに面白い。

一言で言えば、飛込競技を題材にしたスポコン青春物語ってことになるでしょうか。
とにかくまず、「飛込競技」って題材が新鮮でいい。
もちろんぼくは、飛込競技のことなんてほとんど何も知らないわけで。
それだけに、自分の知らない世界を見せてくれるんじゃないか・・・という好奇心が刺激されます。

実際、本書で描かれる飛込競技というのは、実にドラマチックです。
10メートルの高さからプールに向けてダイブする。
その間、わずか1.4秒。
気が遠くなるほど練習して練習して練習して、すべてを懸けて練習したその成果が、わずか1.4秒で決する。
なんてドラマチックな競技でしょう。

そしてなにより、個人競技ってのがいい。

スポコンものといえば、たいてい団体競技ですよね。
主人公がいて、チームメイトがいて。
彼らはときに支え合い、ときに反発し合い、ときにはお互いをライバルとして切磋琢磨しながら、友情を育みチームの絆を強くして、そしてチームとして試合に臨み、みんなで勝利する──ってのが、スポコンものの黄金パターンでしょう。
つまり、全員が勝利者になれる。

でも、個人競技では、勝利者はたった一人だけです。
主人公がいて、仲間がいて。
彼らはときに支え合い、ときに反発し合い、ときにはお互いをライバルとして切磋琢磨しながら、友情を育み仲間の絆を強くして、でも、個人として試合に臨み、勝つのはただ一人だけ。
なんいう残酷なドラマ性!

本書には、要一、飛沫、知季という3人の主人公が登場します。
彼らはまるでトライアングルの形に配置されているかのように、性格も違えばダイブも違う。
でも、三人が三人ともそれぞれに魅力的な個性として描かれています。

ですから、読んでいると三人ともに気持ちが入っちゃうんですよ。
「DIVE!!」は四章構成になっていて、一章が知季、二章が飛沫、三章が要一の物語となっています。
そこで読者は、彼らの飛込みにかける情熱と血の滲むような努力、そして葛藤と覚悟を見せつけられます。
そうして三章をかけて三人の主人公の物語を描いた後、まとめとなる四章が、彼らの夢であるオリンピックへの出場権をかけた代表選考会の試合です。

もうね、憎たらしいくらいに上手い構成ですよ。
オリンピックに出場できるのは一名だけ。
つまり、三人の主人公のうち、勝つのは一人だけで、残りの二人は負けるんです。
言いかえるなら、これは「主人公が負ける物語」なんですよ。
スポコンもので、「努力、友情」ときて、その先に「敗北」が待ち受けている物語なんて・・・。

しかも、三人は同じダイビングクラブの仲間で、とても仲がいい。
お互いにお互いを認め合っている。
でも、敵なんです。
仲間であり、同士であり、戦友であり、ライバルであり、敵でもある。
自分の勝利は仲間の敗北を意味するし、仲間の勝利は自分の敗北を意味する。
──そんな容赦のない直球のドラマが、面白くないはずがない。

そして、何より脱帽したのは、こんなにヒリヒリするような展開なのに、ラストは実に爽やかに終わることです。
ワクワクして、ドキドキして、感動して、涙ぐんで、そして爽やかに終わった。

完璧です。
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by kude104 | 2006-07-26 23:59 |