世の中の物事についてあれこれ考えるkudeの日記


by kude104
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空気人形

昨日は映画サービスデーということで、「空気人形」を観てきました。

なんて言うんだろう、「ダッチワイフ」でいいのかな。
それとも「ラブドール」と言うのだろうか。
空気でふくらます性欲処理用の人形。
そいつが心を持って恋をする――というあらすじも興味深く思えたし、なにより主演のペ・ドゥナさんに興味があったので。

「リンダリンダリンダ」という映画ではじめてペ・ドゥナさんを意識したのだけど、なんだろうね、不思議な魅力というか存在感のある女優さんだよね。
いわゆる「美人」って感じじゃなくて、なんとなく爬虫類系なお顔立ち(と言うと失礼かな)なんだけど、とてもキュートで、独特の空気感があって好きな女優さんです。

そんな感じで気楽にふら~っと観に行ってしまったら、思いのほかしんみり哀しい映画だったのでマイッタ。
設定が設定だけにアダルトな描写が多くあるのだけど、それがちっともエロく思えないのは、「芸術的だから」というより、観ていて哀しくなるからだろうと思います。

主人公の「のぞみ」は空気人形だから、身体の中が空洞です。
一方、他の登場人物たちは人間だけど、みんな心に何がしかの空虚さを抱えている。
身体が空洞の人形と、心が空洞の人間と。
そして「のぞみ」は心を持って、恋をすることで、カラッポの状態からどんどん心を満たしていくのだけど、心が満たされるにつれ、それは同時に心の空洞を作ることになるんだよね。

もうひとつの哀しみは、「代用品」であることについて。
「のぞみ」は「ダッチワイフ」だから、その存在自体が代用品です。
通常本当に抱きたい誰かの代わりに使用されるものだし、また、飽きたり古くなったら別の人形と交換できるから、代わりはいくらでもいる。
一方、他の登場人物たちも、「お前の代わりなんて幾らでも居るんだぞ」と言われるような存在で。

我々は誰しも欠けていて、代用可能な存在だ。
でも、それは人間だけではなくて、生命というものは本質的にそういうものだという。
植物だって、おしべとめしべがあるだけでは不完全で、花粉を運び種を運ぶ鳥や虫や風がその不完全さを補ってくれている。
鳥や虫や風は自分が誰かの不完全さを補っているとは意識せず、気付きもしないけど。
だから、ぼくらも同じように不完全であり、同時に、他の誰かを補う存在でもあるのだと。

みんなどこかが欠けていて、みんなどこかでゆるくつながっている。
それはある種の「癒し」なのかもしれないけれど、ぼくにはやっぱり哀しく思えてしまうのです。

「のぞみ」がアクシデントで身体の空気を失ってしまい、好きな人の息を身体に吹き込んでもらうシーンがあるのだけど、これはどう見てもセックスシーンです本当にありがとうございました。
相手の「息」を身体に注入してもらうことで満たされるって、それ、なんて見事なメタファー。
女性にとって「愛される」ってのはこーゆーことなのかもしれないと変に納得してしまったのだけど、ぼくは男なので良く分かりません。
男の場合は逆に、注入することで満たされるってことなのかなぁ。

ま、いずれにしても、独り身男子が観ると思いのほかテンション下がるから気をつけろ。
独り身女子も、自分を「空気人形」と重ねちゃったりする危険があるから気をつけろ。
独り身じゃなくても、何かしら満たされない気持を抱えている人はテンション下がるから気をつけろ。
ってことはつまり、今幸せいっぱいですという人以外、ほぼ全員テンション下がるから気をつけろ。
それでもまぁ、テンション下がる感じが悪い感じじゃないけどね。

とりあえず、ペ・ドゥナさんになる空気人形があればぜひ欲しいです――という冗談で締めようとして、その人形はきっとぼくじゃない別の誰かを好きになるのだろうと想像してしまって、さらにテンション下がりました。
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by kude104 | 2009-11-02 21:53 | 映画